無題 (メル)
※小説
腹部に重い鋭い衝撃が走ったのは一瞬で、次の瞬間には反射的に身体の全感覚が切り離されて何も感じなくなる。
だけど、身体向上型ARMを使う大男がその強化した馬鹿力で柱の残骸みたいなものを投げつけてくれたおかげで、僕のお腹にはぽっかりと穴が空いてしまっていた。
その場に倒れたのは、痛みでも失血でもなくただ純粋に体幹に大きな損傷を与えられた身体が立位を保っていられなかったというだけの話なのだけれど。
僕が仰向けに倒れ、空を見上げる頃には僕の黒い影によって戦場は制圧されていた。
「ファントム」
すべき役割を終えて戻ってきた黒い影は、顔面蒼白な表情をしていた。
自分が傷つけられたわけでもないのに、それよりもひどく傷つけられたような顔で世界の終わりみたいな顔をする。
そしてひどく小さな声で、謝罪を述べる声が聴こえた。
馬鹿だな。油断していた僕が悪かったのであって、君に落ち度なんて何一つないのに。
「いいよ。別に」
そう言葉を発すると、ペタの顔がますます苦しげに歪んだ。
まるで責められた方がマシだったと言わんばかりに。
事実、ここで“もうペタったら、ボクのことちゃんと守ってよ“なんて言ってみせた方が彼はよっぽど救われた顔をするんだろう。
だから、こんな言葉を返してしまったのはきっと。
きみの悲壮な顔が見たかったから、なんて言ったら怒られるだろうか。
眉をひそめて、込み上げてくる彼自信の様々な想いに耐えながら。葛藤を抱えて揺れる瞳は、この世が終わりそうな時でもしないだろうというような悲惨な色に満ちていてひどく愛おしかった。
くすり。と一つ笑えば、ペタの瞳が訝しげにひそめられて悲惨な表情にいつもの彼らしさが僅かに戻る。
普段、何をしたって無反応なくせに。
僕のことなんかで、こんなにも簡単に心を掻き乱される君は。
(可愛いね)
「―…少し、眠るね」
身体の修復は既に始まっていたから、二日もあれば完全に修復するだろう。
ペタはさっきほどは悲惨な顔をしていなくて、常の冷静に近い、それでもどこか震えた声が了承の意を短く返した。
目を伏せるのが惜しくて、何度も瞬きを繰り返していたけれど、次第に意識がフェードアウトする。
ああ、残念だな。
もう少しだけ君の途方に暮れる顔を見ていたかったのに。
腹部に重い鋭い衝撃が走ったのは一瞬で、次の瞬間には反射的に身体の全感覚が切り離されて何も感じなくなる。
だけど、身体向上型ARMを使う大男がその強化した馬鹿力で柱の残骸みたいなものを投げつけてくれたおかげで、僕のお腹にはぽっかりと穴が空いてしまっていた。
その場に倒れたのは、痛みでも失血でもなくただ純粋に体幹に大きな損傷を与えられた身体が立位を保っていられなかったというだけの話なのだけれど。
僕が仰向けに倒れ、空を見上げる頃には僕の黒い影によって戦場は制圧されていた。
「ファントム」
すべき役割を終えて戻ってきた黒い影は、顔面蒼白な表情をしていた。
自分が傷つけられたわけでもないのに、それよりもひどく傷つけられたような顔で世界の終わりみたいな顔をする。
そしてひどく小さな声で、謝罪を述べる声が聴こえた。
馬鹿だな。油断していた僕が悪かったのであって、君に落ち度なんて何一つないのに。
「いいよ。別に」
そう言葉を発すると、ペタの顔がますます苦しげに歪んだ。
まるで責められた方がマシだったと言わんばかりに。
事実、ここで“もうペタったら、ボクのことちゃんと守ってよ“なんて言ってみせた方が彼はよっぽど救われた顔をするんだろう。
だから、こんな言葉を返してしまったのはきっと。
きみの悲壮な顔が見たかったから、なんて言ったら怒られるだろうか。
眉をひそめて、込み上げてくる彼自信の様々な想いに耐えながら。葛藤を抱えて揺れる瞳は、この世が終わりそうな時でもしないだろうというような悲惨な色に満ちていてひどく愛おしかった。
くすり。と一つ笑えば、ペタの瞳が訝しげにひそめられて悲惨な表情にいつもの彼らしさが僅かに戻る。
普段、何をしたって無反応なくせに。
僕のことなんかで、こんなにも簡単に心を掻き乱される君は。
(可愛いね)
「―…少し、眠るね」
身体の修復は既に始まっていたから、二日もあれば完全に修復するだろう。
ペタはさっきほどは悲惨な顔をしていなくて、常の冷静に近い、それでもどこか震えた声が了承の意を短く返した。
目を伏せるのが惜しくて、何度も瞬きを繰り返していたけれど、次第に意識がフェードアウトする。
ああ、残念だな。
もう少しだけ君の途方に暮れる顔を見ていたかったのに。
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